変わるテストの形態

 昨今、急速な情報技術の革新が進む中でテストそのものの形態も大きく自由度が広がってきています。例えば、いままでテストと言えば、開始の合図とともに受験者全員が同一条件で同一時間内に同一の内容のテストを行うといった光景が普通でした。しかし、能力に差がある個人個人を考えると、評価さえ同一尺度上で行えれば全員同じ問題で行う必然性はありません。受験者個人からすると、自分にとって易しすぎる問題や難しすぎる問題に解答するのは苦痛でしかありませんし、テストを実施する側にとってもそういった問題からはあまりいい情報は得られません。つまり、そのことは全員に同じ問題ではなく、個々の能力に合った最適な問題を個別に与えるのがよいことを意味します。また、さまざまな場所からテスト会場に集まる手間を考えれば、いつでもどこでもテストを受ける環境があれば時間やコストが大幅に削減できるということはすぐにも思いつくことでしょう。

 コンピュータ及びネットワークの技術の発達により、以前は夢物語であったことが現実になりつつあります。既に米国では、コンピュータの助けを借りて受験者ごとにその人に最適な難易度のテスト問題を抽出し、個別テストを行うということがかなり前から考えられており、それを支えるテスト理論が発達してきました。

 個々の性質の分かった問題を利用し、それに対する応答者(受験者)の出来不出来と組み合わせて応答者の能力を推定する理論は「項目応答理論」と呼ばれ、この理論を応用して編集された個別テストは「適応型テスト」という名でかなり定着しています。

 こういったコンピュータを使ったテストは一般にCBT(Computer Based Testing)と呼ばれ米国やヨーロッパでは既にいくつかの資格試験がCBT化されています。日本においては、米国のTOEFLのCBTが有名ですが、入社時の適性テストや情報技術系の各種ベンダー試験で、既にCBTを受験した経験のある方も多いのではないでしょうか。

 コンピュータ・テストは、下図のような4つの世代を経過して発展すると考えられています。弊社では日本で初めて第2世代のコンピュータ適応型テスト(CAT:Computerized Adaptive Testing)の開発及び運用、販売を行っており、現在第3、4世代のテストの研究開発を進めています。

(参考)コンピュータテストの4世代


■第2世代型コンピュータ適応型テスト(CAT)とは

 CAT (Computerized Adaptive Testing) は、IRT(Item Response Theory)分析によるパラメータを有した項目データベースから提示した項目(問題アイテム)に対する受験者の応答(Response)パターンを逐次計算しながら、受験者の能力推定値にもっとも近いレベルの別の項目を提示していくテスティングの方法です。このため、ちょうど視力検査のように、受験者の能力に近いレベルの問題だけ出題されるので、従来の方法よりも短い時間で、精度の高い能力推定値を算出することができます。

CAT出題イメージ


■第3世代型連続測定とは

 連続測定モデルにおいては、まず始めに「完全習得地図(mastery map)」と呼ばれる、ある単元において習得すべき事項が系統立てて記述されている表の作成から始まります。次にこの完全習得地図に基づき、単元ごとに習得状況を把握するための演習課題を作成します。学習者はある単元の学習が終了する毎に、対応した演習問題を受験し、自己の習得状況を確認します。演習課題により、未習得な部分が検知されたら、追指導や独習などが行われます。このように各自の習得状況を確認しながら学習を進行し、その習得結果を可視的に指導者と学習者が共有可能な個人別習得地図に反映させるのが、連続測定モデルの特徴です。

 連続測定モデルを応用することにより、各個人の習得状況を、客観的な資料として顕在化させることが可能となります。具体的な利用方法としては、以下のような事項が考えられます。

  1. 各個人の習得状況が客観的に把握でき、学習・指導のポイントが明らかになる。
  2. 各個人の習得状況が可視的情報として与えられるため、指導者が変わっても、客観的資料として活用できる。
  3. 連続測定モデルに基づき蓄積された記録は、各個人の電子媒体によるポートフォリオとなる。
  4. データを蓄積させることにより、習得モデルの構築が可能となる。

連続測定モデルの概念図

 


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